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From Hachioji with Love

Movie/Anime/Sports/Jazz/Podcast

『ズートピア』感想|進化を遂げたディズニーのミーム

 近年のディズニー作品の中でもエラく評判が高く、某Podcastでも大きく取り上げられていた事もあったので、劇場に足を運んでみる事にしました。ダイバーシティを描いた風刺映画だという取り上げ方がなされていますが、この物語の本質は、ディズニーのミームを現代ならではに進化させたものだと、私は考えます。

 ズートピアという物語は、様々な動物達が暮らす都市「ズートピア」で、新米警官の主人公ジュディが、詐欺師(?)キツネのニックとバディを組み、とある事件に挑んでいく…というお話。この物語のキモは、『ウサギに警察官が務まるはずがない』という周囲からの偏見を、ジュディは人一倍の努力によってはねのけ、一人前の警察官に成長したという所にあります。従来のディズニー映画の更に一歩先を行き、夢の美しさを掲げるだけではなく、その先にある『如何にして夢を叶えるか』という部分まで踏み込んでいる点は実に興味深く感じます。

 なぜ、ディズニーはこのような舵取りに踏み切ったのか、それは、『自由に夢を見ること』が現代社会においては不自然な描写となった(なってしまった)からではないでしょうか。

 「ズートピアは社会風刺映画である」という観点の話をしましょう。ジュディは『ウサギに警察官が務まるはずがない』という偏見にさらされてきました。これはまさに、現代社会に蔓延る『差別意識』と重なります。そして、そこにハッと気づかされる瞬間にこそ価値があるのだというのが、前述した大局の意見だと解釈しています。しかしその先にこそ、ディズニーの舵取りの理由があると、私は考えます。

 差別意識のいったい何が問題なのか、 それは人々の自由な生き方を奪ってしまう点にあるのではないでしょうか。どんな人でも自由に夢見る事が掲げられている、ダイバーシティを前提とした現代社会。しかしその実、人々の中には、黒人少年の射殺事件や働く女性問題に代表されるように、差別意識が根強く息衝いています。「夢見る事なんて馬鹿げている」という意識が社会問題として如実に顕在化している現代では、ディズニー的なファンタジー体験なんて提供できないというのが、ディズニーが舵取りに踏み切った理由なのではないでしょうか。この物語のように、差別・被差別を乗り越えるプロセスが描かれて初めて、夢あふれる体験というディズニー的価値の提供が可能となるのだと考えます。

 さらに重なるストーリーがもう一つ。それは創業者ウォルト・ディズニーの人生です。「そんなことできるわけがない」という周囲の反対のなかで、彼はあの超巨大プロジェクト、ディズニーランドを見事に成功させました。「ズートピアなんて結局おとぎ話。努力で夢は叶わない」という思いを嗤うかのようなこの仕掛けは、さすが天下のディズニー様です。

 『夢あふれるディズニー的価値』が、現代でも色あせない普遍の価値である事を、エンターテイメントの中で見事に証明してみせた本作は、ディズニーの歴史の中に堂々と肩を並べる事でしょう。クリエイターのみならず、多くのビジネスマンの方にも参考にしていただきたい傑作です。 

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この記事は、以前Tumblrにて公開していた記事ですが、一部、表現を加筆・修正しております。

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