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From Hachioji with Love

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【年末】2016年『邦画』ランキング トップ5|”味わい方”を変えれば『君の名は。』よりも面白くなる映画たち

 2016年は新作・旧作を合わせて、100本の映画を観る事を目標にしていました。最終的には93本止まりになってしまったのですが、それなりに数をこなせたのかな?ということで、独断と偏見で選ぶ『2016年邦画ランキング トップ5』をご紹介したいと思います。(洋画を含めても良かったのですが、劇場に足を運んだ映画が邦画に偏っていたので、それっぽくしてみました...)

※ネタバレは極力避けているつもりです。もし気になった作品があれば、ぜひチェックしてみてくださいね

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※ランク外『君の名は。

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 最後までこのタイトルが出てこないと「???」となりそうなので、前置きという形で。

 別に天の邪鬼だからという訳ではないんですが、どうしても観ながら話の整合性が気になってしまったというのと、作品を見た後に残るものがなかったということでランキング外とさせていただきました。エンタメとしては面白かったんですけどね。

 では改めて、以下ランキングのご紹介です。

 

第5位『怒り』

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 「信じる」という行為の本質を表現することに挑戦したのが、この『怒り』という作品なのだと思います。

 家族・恋人・友人という、相手を信じることによって成立する人間関係。上辺の言葉で済んでいた「信じる」という行為の証明が、ある事件を契機に揺らぐことになる。そして、信じることの証明を他に求めたときに初めて、自分は本当に相手を信じ、愛していたのか、自分は本当に相手に信じられ、愛されていたのかということを考えるようになる。今まで信じていたものがも脆くも崩れ去ったときに初めて、本当の『怒り』という感情が湧き上がる。

 描かれているテーマの面白さもさることながら、抽象的なストーリーラインが具体的なエピソードに綺麗に昇華されていることで、没入できる物語に仕上がっていたのではないでしょうか。

 また、実力派の役者陣の熱演も見所のひとつでした。ゲイカップルを演じるために妻夫木聡綾野剛が同棲までしたというのだから凄い...。

 

第4位『アイアムアヒーロー

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  アクション映画といえば、資金の潤沢なハリウッド映画の十八番ですが、この映画はその常識を見事に覆してくれました。

 ゾンビ映画におけるホラー・スリルの体験という面白さだけでなく、ユーモアにアクションに心理的な駆け引きにと、ゾンビ映画という枠に囚われない、バラエティに富んだ面白さを内包しており、尚且つひとつの物語として無理の無い作りになっていたことで、唯一無二の映画体験が作り上がっていました。

 役者のネームバリューで映画を売ることが(残念ながら)通例になっている日本映画ですが、この作品では、主演の大泉洋をはじめ、役者自身がそれぞれに持つ魅力を存分に引き出すつくりになっていました。日本映画ならではの制約を逆手に取り、作品の魅力に結びつけたこの作品が、今後の日本映画のロールモデルになってくれればなぁ...なんて思ったり。

 

第3位『聲の形』

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 今年は『君の名は。』や『この世界の片隅に』など、ジブリ作品不在にもかかわらずアニメ映画が豊作の年でしたが、その中でも自分が一番気に入ったのが、この『聲の形』でした。「ある周囲の変化が主人公を取り巻く環境を掻き乱すことで、自分や他者の本物の内面に向き合わされる」という文脈の映画がたまらなく好きなのですが、この作品も、そうした文脈を持つ映画だったと思います。

 それぞれのキャラクターが、人間臭いという言葉では言い表せないほどに作り込まれていることもさながら、それによって、物語の展開に必然性がもたらされているという点が、理屈屋の私にとってツボでした。植野直花という存在を『悪』ではなく『ひとつの正義』として描いたことが象徴するように、『善と悪』という記号的・短絡的な対立構造ではなく、『正義と正義』の対立が描かれていたのが、キャラクターをないがしろにせず、また受け手が誰かに感情移入しながら観れる作りになっていたのだと思います。

 (まだまだ語り尽くせていない感があるので、また個別で記事が書きたいですね。 )

 

第2位『シン・ゴジラ

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  ヱヴァンゲリヲンQに拍子抜けした人間としては、旧エヴァの正当な後継作品として、ぜひこの『シン・ゴジラ』を推したいです。

  名将と呼ばれるような優れたスポーツ監督は、一から新しい事には取り組まず、経験から形成された自分の哲学に、新しい要素をフィットさせることで、次々に成功を修めています。庵野監督も、(旧)エヴァンゲリオンという成功体験の中で確立させた物語の”型”に、”ゴジラ”や”実写”といった今までの作品に無かった要素を次々にフィットさせることで、庵野監督にしか表現できないゴジラ映画を作りあげました。

 (あくまで個人の意見ですが)新エヴァは、本作とは対照的に、同じ要素(=エヴァの世界観や登場人物など)を使用しながらも、全く新しい物語の型 を模索している作品なのだと思います。しかし、野村克也アイデンティティが、古田敦也田中将大という要素ではなく、弱者の兵法という”型”であるように(細かい話をすると全然違ったりはするのですが)、庵野秀明アイデンティティは、エヴァという要素ではなく、旧エヴァとこの物語の共通点たる”型”なのではないでしょうか。そしてそのアイデンティティ再現性を証明した本作は、つまり、庵野秀明という男を証明した作品であるとも言えるのではないでしょうか。

 

第1位『FAKE』

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  1位に選んだのは、まさかのドキュメンタリー映画。上映館数も少なかったので、観ていない方も多いのかもしれません。「事実は小説よりも奇なり」という言葉がありますが、日本中の話題を席巻した事件の渦中にいた男を描いたこの作品は、単なるイロモノを期待した私の想像を遥かに上回るものでした。

 穿った見方を押し付けた日本のマスコミを批判する形で生まれた本作。この映画は、佐村河内守という男をありのままに切り取ることで、中正・公平に事実を伝えるべきというジャーナリズムのあるべき姿というものを、まさに体現する映画となっていました。

 この映画における表現の特徴として、監督であり撮影者でもある森達也氏が、恣意的な編集を意識的に排している(観客という第三者からは「排していると思われる」とまでしか言えませんが)点が挙げられます。着飾り切ることのできないであろう膨大な時間をカメラに収め、佐村河内氏や彼の妻の主張・発言や出来事は、加工しない事実のまま時系列で淡々と繋がれる。そして、そういった映像の中で、誰の目で見ても、誰の耳で聴いても確かだと言える証明を実行してみせる。「衝撃のラスト12分間」の謳い文句に、偽りはありませんでした。

 この作品のラストシーンを通して、あの事件における疑念を見事に晴らしてみせた佐村河内守、そして、この映画そのものを通して、ジャーナリズムのあるべき姿を自ら体現した森達也。借り物の言葉でいくらでも自分を虚飾できるこの時代において、二人が証明した自分自身の価値というものは、この時代だからこそ、より光り輝き、そして評価されるべきものなのではないでしょうか。

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 どの作品も、まだまだ語り尽くせていないのですが、年内に公開しないと意味が無いエントリーなので、今回はこの辺りで御勘弁ください。

 邦画だからと思考停止で批判している自称映画通も多いように感じますが、本当にもったいない!心当たりのある皆さん、2017年を「邦画に手を出す年」にしてみてはいかがでしょうか。 

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 では、次回の記事でお会いしましょう。良いお年をお過ごしください!

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